モジモジ君の読書記録。みたいな。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-04-10

[]閉じられた履歴書──最も弱き人たちが住む位相で考える(29) 閉じられた履歴書──最も弱き人たちが住む位相で考える(29) - モジモジ君の読書記録。みたいな。 を含むブックマーク

 新宿区の婦人相談員として30年間、売春に従事する女性を見つめてきた著者によるドキュメンタリー。今なお価値を減じていない、この分野における古典といっていい本である。

 実は、売買春肯定派には、この本の評判は悪い。売買春にまつわる負の側面だけを取り上げ、それをもってすべてであるかのように騙り、不当に売買春を否定している、と言うのだ。この本を読み込んだ否定派がそのような物言いをしていることは、確かにある。しかし、その責をこの本に負わせるのは無茶というものだろう。それどころか、肯定派の主張は、兼松氏のこの本に出てくる女性たちを前に、どれほど誠実なものたりえているか、正直疑問ばかりがわいてくる。

 この問題を取り上げるにあたって、「力強く自己肯定する性労働者」イメージを掲げるだけでは、ほとんど意味はない。もちろん、そういう人もいないとは言わない。しかし、それこそ一部をもってすべてを代表させんとする物言いではないだろうか。やむにやまれぬ状況の中で従事される売春は、やはり「ゆっくりとした自己破壊の形式」なのだ。すべての性労働者がそうなのではない。しかしそれでも、そのような性労働者がいるのだ。すべての、ではないが、しかし確かにある問題を、きちんと見据えなければならない。そのような姿勢は、買売春の問題を考えるときにだけ必要となるわけじゃないけれども。