takehiro130の日記

2008-06-21

『言われた仕事はやるな!』(石黒不二代著)

20:06 | 『言われた仕事はやるな!』(石黒不二代著) - takehiro130の日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『言われた仕事はやるな!』(石黒不二代著) - takehiro130の日記

 友人がブログに書いた感想を読んだことをきっかけに、ネットイヤーグループ代表取締役社長でCEOの石黒不二代さんが書いた『言われた仕事はやるな!』(朝日新書)を読んだ。彼女は日本で働いた後、MBAがキャリアアップにおいて大きな役割を果たすという考えと、日本では仕事と子育ての両立が困難という思いから、スタンフォード大学ビジネススクールに入学してMBAを取得し、現在へと至る。今はシリコンバレーに拠点を置き、コンサルティング会社を経営している。

 この本は生き方・働き方の一つのロールモデルを提示してくれるものだと思う。特に、労働における多様性や人の流動性が乏しいという意味での閉塞感に苦しんでいる人や、新しいことにチャレンジしたい人、仕事と子育てを両立させたい人にとっては、希望を与えてくれる言葉や情報がいくつか見つかるかもしれない。

 本の中でほんの一部でしかないが、中でも、彼女の本の中にある次の一文が好きだ(他にもぜひ紹介したい部分があるが、今回はこの一文を掘り下げて書きたいと思う。

自分の人生はとても一貫性があり、ゴールがあるゆえに連続的なのだ。

これが、Steve Jobsスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチを思い出させてくれた。完全に正確ではないが、おおよそ次のような言葉だった。

You can't connect the dots looking forwards.

You can connect them only looking backwards.

要するに、未来に何が起こるかはわからないから、今の時点でこの先にある点と点を結ぶことはできない、これまでを振り返ってきたときにだけ結ぶことができる、といった意味だ。

 子どものころを含め、長い人生の中で考えることはそのときそのときで違ったり、ゆえに行動も様々だと思う。例えば小学生のときはプロ野球選手になりたかったが、高校生では天文学者に、大学生では小説家に、社会人になったらジャーナリストになっていた・・・キャプテン翼が好きだった・・・何でもいい。これらは一見関係がないように見える。しかしながら、自分の中で「なぜそうなりたいと思ったのか」「なぜこう感じたか」などをよくよく掘り下げて考えると、共通点が見えてくるように思う。ただし、前々から「こういうふうになりたい」とか、一つ一つの選択を、悩んだ上で真剣にしてきたということは必要だと思う。

 人生で大きな舵を切ろうとすると、周りの人はいろいろと言うかもしれない。でも自分を掘り下げた上で、可能性を信じ、一つ一つの決断に真剣に向き合えば、おそらくゴールにたどり着く可能性は高まるのではないか、と思う。それはゴールにたどり着いた後でわかることなのかもしれないけれど。いつか、自分の人生には一貫性があったと言えるようでありたいと思う。

言われた仕事はやるな! (朝日新書)

言われた仕事はやるな! (朝日新書)

2008-06-18

『ディープ・エコノミー』(ビル・マッキベン著)

22:40 | 『ディープ・エコノミー』(ビル・マッキベン著) - takehiro130の日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『ディープ・エコノミー』(ビル・マッキベン著) - takehiro130の日記

 『ディープ・エコノミー』(ビル・マッキベン著)は、「人のステータスは金だ」と思っている人からすれば、全く面白くない読む価もないかもしれないが、「お金は必要な分とちょっとしたものを買う程度はある。でもぶっちゃけ生活に満足しているかというと、そうじゃない。金以外の部分で。」と感じている人にはとっては一読の価値があると思う。自分の中に潜む、しかしまだ気付いていない価値観に気付く、または取り戻すことができるかもしれない。

 最近、国の豊かさをGDP国内総生産)やGNP(国民総生産)ではなく、新しい指標で測ろうとする動きが、いくつかの国にあるらしい。ブータンのGNH(Gross National Happiness)は有名だ。それだけでなく、政策レベルには到達していないが、G8のメンバーであるイギリスも「幸福度指数」を作る案を発表し、カナダは「地域社会の活性度」を測定しようとしているらしい。最も量的に位置づけることの難しい指標ゆえ、いろいろな批判もあるが、「量はもういいから質へ」と考える人が増えてきたことを示すという意味で、こういう動きが出てきているということは、金ではない部分で生活に新しい価値(あるいは昔あったが失った価値)を求めている人が多いという意味で、一考に値するものだと思う。

 量的拡大を最大の目標に置いた経済は限界に近づきつつある。地球温暖化問題やピークオイル、食料問題のニュースからわかるように、地球のエネルギーは有限であり、ゆえに地球で生み出すことのできるモノには限界がある。それに、このような経済の下、物質的にそれほど不足ない人々ですら、生活に満足していない人は増えているようだ。自由主義経済の下、効率化を最大限に図ったため、いろいろなものが失われた。人とのつながり、環境、平等性、安全、・・・。最近の調査によれば、「GDPが世界一高いアメリカでも「私は幸せだ」と答える人は減少傾向にある」らしい。たとえ経済的に恵まれていてもだ。

 この状況に対し、地域経済を主とする、効率的ではないが多くの人が人間らしい幸福感を感じられる、量と質のバランスのとれた、しかし複雑な新しい経済「ディープエコノミー」を提唱しているのが本書だ。こういうと、昔の生活に戻ろうなんて!と思う人もいるかもしれない。いや、さすがにそれは現実的に無理だ。ただ、この本は「ちょっとだけモノに対する欲求レベルを下げる」ことで、実現できないことのないことではないことを、食や都市計画、ラジオなど、最新の事例を挙げながら説いている。

 地球が持続可能であるよう、この新しい経済を広げるのはそう簡単ではないだろう。グローバルにいくつもの支社や支店を置く巨大企業の利益やそれに付随する政治家の力に反する部分もあるし、何よりまだ多くの人が拡大を主とする量的経済を前提とした生き方をし、政策も同様だ。それに、技術の組み合わせに工夫も必要だ。ハイテクではないが、制度を含めた新しい地域社会システムに合った形での技術利用・組み合わせがポイントになる(2025年に実現すべき夢の先端技術もいいが、これこそが、国も大学の研究者も、もっと目を向けるべき社会のための技術だと僕は思っている。世論調査結果を掘り下げれば、人々が本当に何を求めているかわかるはずだ)。それでも同書によれば、各国の地域社会では、小さな動きが始まっているようだ。それがきっかけで、量的にも質的にも妥当な部分で落ち着き、生活満足度が向上した人たちがいる。著者も、「ディープエコノミー」とは何かを論じるために、身をもってそれを体験(自分を使って実験)し、本書を書いたようだ。その例が、食の地産地消について書かれた次の部分だ。

・・・寒い冬の間、完全に地元産、つまり私が暮らすシャンプレーン湖周辺の盆地で得られる食物だけで生きていけるかどうか確かめてみたかったのだ。・・・本当に地元に限った経済とはどんなものなのかを、わずかでも感じ取ろうとしたのである。というのも、広がった社会が「量」は必ずしも「質」ではないという壁にぶつかっているのだとしたら、取り得る選択肢の一つは、別の規模で考えることだからだ。(P67)

その結果、著者はこのように締めくくっている。

このような食生活を送ることには代価を伴う。健康や金銭ではない。それは時間である。考えることなく歩き回って手当たり次第にカロリーを摂取するのではなく、食事のたびに頭を使わなければならなかった。食事に注意を向けなければならなかなったのだ。しかし、この代価と引き換えに得られるものは計り知れないほど大きい、これまで知らなかったつながりだ。私は舌だけでなく脳も使って食べる。一つ一つの食事に物語がある。・・・食材を購入したり食事を準備したりすることに費やした時間は結局、代償でも何でもなかった。ふたを開けてみればそれは利益だった。・・・(利益とは)すなわち地域社会の一部だった。・・・

 この本を読んでいると、なぜ僕の父親がヨドバシカメラケーズデンキなどではなく、いまだに松下電器の小売店でテレビを買うのかが理解できる。たとえヨドバシのテレビのほうが安いとしてもだ。金では買えるものではない、別の、利益と思えるものが存在するからだ。なぜ手間隙かけて家で野菜を作るのかが理解できる。スーパーで買うそれよりも、舌では味わえない味も加わってさらに美味しいからだ。それはまさに生活の満足度を高めるから、父親はこのような行動をとるのだろう。

 もっとも価値観が違えば、100人中100人が彼の例と同様にはいかない。しかもこれは、金という一つの軸で比較できるものでもない。それでも、せめてもう少し日常的にこのような満足感を感じながら生活したい、「実は」思っている人は少なくないのではないか。そうだとして、では、それを実現する社会にしていくためにはどうすればいいのか。全く素人の考えだが、おそらく、誰かが新しい価値を提示し、制度と技術がうまく組み合わさり、多くの人がその価値に共感するといった連鎖が起こすことが必要ではないか。そうであるならば、まずは地域社会において、その新しい価値を提示できる人と、制度と技術をうまく組み合わせる人(リーダー)が出てくることが重要なのではないか。著書で挙げられた事例をみても、やはりキーマンがいる。このような地域社会が増えて、著者の言う「ディープエコノミー」が国、世界に広がっていくのかもしれない。

ディープエコノミー 生命を育む経済へ [DIPシリーズ]

ディープエコノミー 生命を育む経済へ [DIPシリーズ]